加藤文雄写真展「森に輝く」〜ホタルの光〜

BLUE DOLPHIN

2011年05月17日 14:14



今年の夏、写真展を開催します。
沢山のご入場お待ちしております。

加藤文雄 写真展 「森に輝く」〜ホタルの光〜

日程 2011年6月26日(日)~7月10日(日)  *28日(火)のみお休み
時間 11:00~20:00 入場料無料
会場 モンベル渋谷ビル5F
   150-0042 渋谷区宇田川町11番5号
   TEL 03-5784-4005

スライド&トーク
7月2日(土)17:00〜18:30
7月9日(土)17:00〜18:30
*7月2日は音楽家・森本公三さんがゲスト出演されます。
参加費:500円
定員:40名程度
予約:必要
お申し込み:メールにてお申し込みください。

モンベルH.P.

ということで、発表させていただきます。
実は、この話は昨年のうちに決まっていました。

話はさかのぼり、昨年の3月。小笠原に撮影に旅立つ前に、海で使う道具や山で使うコンパスを購入するのに、渋谷のモンベルに立ち寄りました。朝でお客さんが少なかったので、お店の人にこういったグッズはないかとか色々と質問してるうちに、なんでそれが必要なのかを説明してる中、自分が写真家であることを明かし、たまたま営業用に持ってた写真ファイルをお見せすることに。すると、お話してたのは店長さんで、「ぜひ、うちで写真展示してくださいよ」って有り難いお言葉。一番上に展示スペースがあることを知ってたので、そこを使わせていただくのは願ってもない話。

で、広報課の方とお話をし、海の写真、アラスカの写真、森の写真、色々ある中で、決まったのがホタルの写真。約7年間撮り続けてきたテーマ。今までもキャノン、ペンタックスのギャラリーに出したものの審査で落選。えっ、なんでやねん?と落とされた理由がわからないほど、自分の中では自信を持って見てもらえる作品がいっぱい。いつかは発表しようという思いもいっぱいであった。

そして日が過ぎて、また今年3月の小笠原。出港の前に東京で例の大地震。モンベルのほうから連絡があった。「写真展、どうされますか?こんな状況なのでキャンセルされてもいいですよ。」と。そこで、悩んだ。その時はまだ断続的に余震があり、停電の問題もあり。とりあえず今年はキャンセルして落ち着くまで待ったほうがいいかも。ってキャンセルに傾きかけた。

毎日のように流れた地震のニュース。そこに映し出されたのが、電気が灯って安堵してる被災者。人にとって明かりというものは単に生活の道具として便利なものという以上に、精神的に癒されるものだったりもする。ある時、友人と食事してる時に「世の中、今必要なのは光ですよ」的な自分を後押しする言葉。あるいは、また別の日にニュースキャスターが最後のシメの言葉で、「原子力による大きな光、小さなホタルの光・・・」と詳細は失念したが、セレンディピティな出来事。そんな事が重なり、当初の予定通り写真展の開催を決意した。

普段は海の写真家としてのイメージが強い私だが、なぜホタルの写真を撮ってるのって聞かれると明確な答えを出せていない。仲間からの海の誘いも断りストイックに山にこもる。空からやんわりとおりてくる光のほかは全くの漆黒の闇だ。最近気がついてきたことだが、この闇というものにも惹かれてる自分がいる。どんなに目を凝らしても何も見えてこない本当の闇。そんな森の奥深くでひとりぼっちで佇む。大抵の人なら恐くて早くその場から立ち去りたいに違いない。でも、その恐さの向こう側には心地よさがある。静寂の時間。

夜が更け、闇の中にぽっと、どこからともなく現れる小さな黄色い光。この瞬間がまた何とも言えない嬉しさでいっぱいになる。やはり、自分が求めていたのは闇でなくて光なのか。シーズンのはじめ、1年ぶりのホタルの光を見た時必ず嬉しさのあまり自然と涙が流れる。涙もろくなったせいもあろうが、1年ぶりの友との再会のようでハグしたい気分。残念ながら、さすがに小さすぎてそれは出来ないけど。

シーズン終盤、ホタルの光が弱くなり撮影を終える日。私は緑繁る森に、それと、それまでに撮影させてもらったヒメボタル達に何度も「ありがとう」と声をかけ別れを惜しみながら感謝を伝える。その弱々しく最後の力を振り絞って光るホタル達に「また、来年も会おうね」と声をかける。でも、実際はその願いは叶えられることはない。来年に出会えるのは、そのホタルの子供達。そこで光ってるホタルは成虫になっての数日間の命を終え土に還る。もう二度と出会えないのだ。帰路につく車の中では切なくて、また涙が流れる。

ホタルの光、ずっと土の中で過ごし成虫になったオスとメスのラブコール。それは命を紡ぐ小さな光。そんな営みがずっと昔から連綿と続いてる。そしてこれからも。そんなところが、私がヒメボタルを撮影し続ける一番の理由なのかもしれない。



あ〜、えらい長い文章になってしまった。読んで下さった方、ありがとうございました。

関連記事